整形外科学的考察を行うブログ

The Bone Identity ~整形外科医の日常~

整形外科医による日々のつぶやきです.

TKAでの後顆骨切り、コンポーネントと膝屈曲についての関係についてまとめ。

TKAでは大腿骨、脛骨側の骨切りがあります。

大腿骨側では術前作図の外反角度、回旋角度を決定すれば、ほぼ機械的に骨切りを行うことが可能です。

 

しかし脛骨側では関節面や脛骨の弯曲など変形が高度な症例や、逆に変形が少ない症例もあり、骨切り量については一貫した方針がない印象を受けます。

 

大腿骨後顆の骨切りは特に屈曲ギャップにおいて重要であり、後顆の骨切り量が適正でなければコンポーネントでの調整や補強を要することにもなり、慎重な対応が必要です。

また後顆部分の厚み(後顆のオフセット)の増加は深屈曲時のコンポーネントへの負担や、可動域の低減などに影響するとも言われています。

 

PS型TKAについて後顆の増大が可動域に影響あるか調べてみました。

 

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・2007年のJBJS Brの本論文では後顆オフセットと屈曲角に影響はなし。

 

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・2010年、The kneeの本論文では後顆オフセットや脛骨後傾は屈曲角に影響なく、術前可動域が術後可動域に影響する因子としていました。

 

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https://www.thekneejournal.com/article/S0968-0160(09)00211-7/fulltext

・2013年のCORRの論文でも後顆オフセットと屈曲角は関係なし

 

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・2018年のThe kneeの論文では内側後顆オフセットと脛骨後傾きは屈曲角に影響する可能性があるとの結果でした。

 

まとめ

幾つか論文をピックアップしてみましたが、現時点では後顆が屈曲角に影響するというコンセンサスは得られていないようです。

 

株価急落!それでも投資家がアップルに投資するべき理由。

アップルショック 

アップルが2019年1月2日引け後、利益警告を出しました。

内容は売上高の下方修正で旧ガイダンスでは売上高予想は890億~930億ドル、コンセンサスは913.7億ドルだったものが、第1四半期(12月期)の売上高ガイダンスは840億ドルへ引き下げられるというものです。

special.sankei.com

 売上不振の原因

iPhoneが売れていない

 まず中国での販売不振が挙げられます。中国のアップル店舗への来店客が減り、売上が著しく減速しました。米中関係の悪化や米中貿易戦争が影を落としていると考えられます。

 さらに米国市場でも、通信会社がハンドセットに対する補助金を相次いで減額したため、高価なiPhoneが売れにくくなっています。

 米国は年々インフレしているためiPhone価格も上昇しています、しかし日本では賃金は多少上がっているものの、インフレが全く起こっておらず、相対的にiPhoneが高値となってきています。現在は若干円高に振れているものの、それで補えないほどの価格上昇となることや、長年使っているiPhoneへの愛着や新機種への魅力減などで販売不振に陥っているわけです。

iPhone販売の不振が伝わる…Appleの迷走ぶり - ライブドアニュース

 

 アップルはスマートフォン市場が飽和しつつある状況の中でブランド価値と販売価格の上昇で利益を上げていく戦略をとってそれが奏功してきたわけです。

 その方策もついに天井が見えてきた。これが「アップル・ショック」の概要です。米国株式市場は1月3日、急落を演じています。

 アップルの時価総額が750億ドルも減じたとされています。

 

今後のアップルは投資対象になるか

 結論から言えば、投資家はまだアップル株を保有し続けた方が賢明です

なぜなら、アップルの現在の株価パフォーマンスはiPhoneと結びついている一方、同社の今後の収益は、13億台と推定される膨大な可動端末と結びついていると考えられるためです。

 外部ネットワーク性で一度市場のシェアを握ったものはその後のルール変更、市場拡大に絶対的に有利なのは明白です。

 例えば、端末が可動している限り、クラウドのストレージ料金や、Apple Musicの月額料金の増加、その他サービスの向上などで端末から収益化を図るための方法を見つける余地が残されているからです。

 

 多少の料金の改悪などでは端末を変えるという選択肢は多くの場合ないわけです。

一度決めた方法を変えたり、新しい機器を導入することは、多くの人にとって大変ストレスです。

iPhoneを買い替えたことがある方ならわかると思いますが、クラウドを利用してデータ、アプリの同期が完了する便利さは捨てがたいものです。

 これは顧客の忠誠ということといえます。

 端末を変えることへの負担、アップル製品を保有していることの商品価値、ブランド性から考えるとアップルの地位が脅かされるリスクは低いでしょう。

 

 そもそも投資家のアップルに対するセンチメントは5cの失望、大画面の6の成功、6sの不振といった具合に数年で揺れ動いてきました。

 その中でブランドを確率し、株価を上昇させてきたこと、バランスシートが強固であること、顧客基盤が強固であることやソフトウェア、サービスの姿勢、配当金の増配など優良な点が多数あります。

現在アップルの2019年度の予想PERは12倍で、S&P 500の14.2倍を下回り、割安です。

iPhoneの売上不振は現時点で十分に株価に織り込まれたと考えられ、買い場がきたとも考えられます。

 しかし過度に楽観的にはいられないのも事実

スマートスピーカーでは米国ではAMZONのエコーがシェア最大など幾つかのテクノロジーで競争の後手に回っている点があります。

ただ自分の印象としては最近のテクノロジーにはiPhoneほどのインパクトはなく、市場に普及するかも明らかではありません。

これらの機器が市場に普及して収益化につながるのであれば、後手に回っているアップルの株価は上がりどまる可能性もあり、今後の動向に注意することは必要です。

 

まとめ

 iPhoneのブランド、市場シェアを考えれば、端末の売上が低迷しても収益化の方法が改善されれば利益上昇が見込めるものの、未来は誰にもわかりません。

しかし現在の株価が低すぎると考えられるため、同社への投資は依然として検討していいと考えられます。

 


 

 

保有銘柄の決算確認の習慣をつけよう

決算確認の重要性

株価の今後を予想していく上でマーケットの動向も大事ですが、それ以上に決算を重要視することが必要です。

 

本来、株価は将来の利益を織り込んで変動しているため、株価が分子にくるPERや、PBRだけを指標にして売買することは得策とは言えません。

 

 

PERは本来は予想EPSで算定されるため、低PERとなっているのが、業績悪化を株価が織り込んで低下しているためか、単に市場の低迷や不人気のため株価が下落しているためかを判定する必要があるわけです。

業績についての判断指標はEPSや決算内容が市場のコンセンサスを上回るかどうかとされています。

 

決算日の確認方法

決算日の確認方法は多種多様と思います。

自分はSBI証券で決算日を確認するようにしています。

 

SBI証券ログイン後

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上段のカテゴリからマーケット>経済カレンダーを選択します

 

 

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経済カレンダーを選択すると、画面中央付近に経済指標、決算発表スケジュールの欄が出てきます。

 

検索ウインドウから銘柄名やコード、ティッカーシンボルを入力していきます。

ベビーパウダー問題などで株価が下落しているジョンソン・アンド・ジョンソンを検索してみました。

次回の決算発表は1月22日のようです。

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 組織内の隠蔽体質が囁かれている中、業績が続伸を続けているようであれば憂いなく、買い増す機会と考えられますし、ニュースを受けて売上低迷、業績低下が発表されれば、株価は間違いなく下がりますので、JNJの購入については決算発表後に検討した方が賢明かもしれません。

 

 

 

2018年12月の投資成績 株価急落につき、債権ETF、MOを購入

 

2018年12月の動向

 

2018年12月 S&P500 チャート

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S&P 500は2018年9月17日の最高値をつけたあと、下落を繰り返し、2018年12月17日時点で18%下落をきたしています。

 

 

・2018年10月から始まった調整局面は12月も同様で、ベア・マーケット入りが示唆されています。

 

・また大きなニュースが2つありました。

1つはジョンソンエンドジョンソンが販売しているベビーパウダーアスベストが混入しており、同社はその事実を隠蔽していたという内容です。

報道を受けて同社の株価は急落しています。

blogos.com

 

2つめはタバコ会社であるアルトリアの事業拡大投資です。

大麻事業、電子タバコ事業に参入するようです。

financial-freedom-rentier.com

ジョンソンエンドジョンソンは整形外科ではインプラントメーカーであるDepuy Synthesの親会社でおなじみですね。

両者とも巨大企業だけに今後の動向が注目されます。

 

2018年12月の購入銘柄 


NISA枠以外にアルトリア(MO)と債権ETFであるAGGを購入しました。

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1. MOはメンソール式タバコの規制ニュースやベア・マーケット入りで急落していたこと、事業拡大の投資をしていたことから成長性があると考えて購入しました。

 

2. 弱気相場入りから安全資産への資金流入が進んでいます。

具体的には金、債権などです。日本円も円高傾向になっています。

AGGは総合債権ETFで値上がりがマイルドですが、安定した配当利回り(直近で2.72%)、配当金も安定していること。

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2008年のリーマンショックでも直近の高値から15%程度の下落であったことから、安全性が高いと考え、組入を行いました。

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投資銘柄,比率について 

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VTI 26%と高めを維持

VTI 4% 世界分散を考慮すると買い増しを検討した方がいいかもしれません。

VWO 11% 新興国ETF。株式比率に10%程度組み入れることでリスク低下とリターン上昇が見込めます。比率は適切と考えられます。

 

個別銘柄7、ETF5銘柄

 

今後の展望

ETFについては欧州への投資がカバーされていないため要検討です。またREIT、金などまだ分散化できる余地は残されています。

個別株についてはまだ7銘柄であり、セクター分散を考慮してもう3つ程度組み入れることを検討したいと思います。

 

結論

12月は株価暴落により投資成績は−8%でした。

分散を意識することができたこと、株価の買値により気をつけることができたことから重要かつ必要な局面だったかもしれません。

ここでの継続投資が後のリターンとなればと考えています。

 

先行者優位、ネットワーク外部性、initiativeをどうとるかという話。

先日モバイル決済アプリのpaypayが大型キャンペーンを行っていたのは記憶に新しいと思います。

paypay.ne.jp

「100億あげちゃう」キャンペーン | PayPay株式会社

 

電子マネーとどう違うんだといえば、一消費者からすると決済の方法が違うだけで便利さに関しては同程度かなという印象でした。

電子マネーと比較して入金の必要がないというメリットはあります。

しかし、店舗側としては手数料が低いなどのメリットがあるようで、モバイル決済の乱立状態となっています。

 

こういった、群雄割拠というか、戦国時代の様相を見ると、私は先行者優位とか、ネットワーク外部性とかを想起してしまいます。

 

paypayが何故あのような大規模キャンペーンをやるかといえば、市場のinitiativeを取りたいからですよね。

 

一般的に先行者ほど、市場でのinitiativeを取りやすく、結果としてネットワーク外部性のメリットを享受しやすくなります。

 

ネットワーク外部性とは
ネットワーク外部性とは、製品やサービスの利用者数や利用率が増えるに従い、その製品やサービスの質やメリット、利便性が利用者そのものに還元される性質や現象です。

 

今回のようにモバイル決済を使用する人口が増加すれば、使用できる店舗が増えるほか様々なサービスの拡充が行われるという現象が今後起こってくると考えられます。

 

 

ネットワーク外部性においては利用者数や市場シェアがそのまま利用者のメリットや製品・サービスの質の向上につながると考えられるからです。

これは、ネットワーク外部性の直接的効果と呼ばれています。

 

一方で、利用者数や市場シェアが間接的に働く場合もあります。ネットワーク外部性によってある製品やサービスの利用者が増えれば、それに関わる製品やサービスが増えて購入しやすくなったり、価格に影響するなど、その製品の価値を間接的に左右することがあります。

これはネットワーク外部性の間接的効果と呼ばれています。

 

 

 

 

 

そして、市場をとるという考えでは私は「スティール・ボール・ラン」(16巻 82頁)のファニー・ヴァレンタイン氏の名言を思い出します。

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ファニー・ヴァレンタイン

このレースが終わった時・・・その時・・・この地球上に
『どんな事が起こるのか?』説明してあげよう
たとえ話で・・・・・・・・・・・・
君は このテーブルに座ったとき・・・
ナプキンが目の前にあるが・・・
君はどちら側のナプキンを手に取る?
向かって「左」か?「右」か?

左側のナプキンかね?それとも右側のナプキンかね?
普通は・・・・・・・・・「左」でしょうか(ルーシー)
フム ・・・・・・・・・それも「正解」だ
だが この「社会」においては違う
「宇宙」においてもと言い換えていいだろう
・・・・・・・・・宇宙? ?(ルーシー)
正解は『最初に取った者』に従う・・・だ
誰かが最初に右のナプキンを取ったら
全員が「右」を取らざるを得ない
もし左なら全員が左側のナプキンだ そうせざるを得ない
これが「社会」だ・・・・・・・・・・・・
土地の値段は一体 誰が最初に決めている?
お金の価値を最初に決めている者がいるはずだ それは誰だ?
列車のレールのサイズや電気の規格は?そして法令や法律は?
一体 誰が最初に決めている?
民主主義だからみんなで決めてるか?それとも自由競争か?
違うッ!!ナプキンを取れる者が決めている!
この世のルールとは「右か左か」?このテーブルのように
均衡している状態で一度動いたら全員が従わざるを得ない!
いつの時代だろうと・・・・・・・・・
この世はこのナプキンのように動いているのだ
そして「ナプキンを取れる者」とは万人から
「尊敬」されていなくてはならない
誰でも良いってわけではない・・・
無礼者や暴君はハジかれる ――― それは『敗者』だ
このテーブルの場合・・・ 「年長者」か・・・
もしくは「パーティー主催者」に従ってナプキンを取る
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「尊敬」する気持ちが全員にあるからだ・・・・・・・・・
仮に このテーブルに「イエス様」がつかれているとしたら
たとえ どんな人間だろうと ローマ法王でさえ
エス様のあとにナプキンを取らざるを得ないだろう?
・・・・・・イエス様・・・?どういう意味ですか?このレースと何の関係が?(ルーシー)
「たとえ話」だよ「た・と・え・」だ!
このレースが終わる時 我々の繁栄が始まるという事だ
もうすぐそれが手に入る・・・・・・
世界中の万人が「敬意を払う」ものがな・・・
それはゆるぎない確かなもの
それが「真の力(パワー)」だ その力の下には「味方」しかいない
最初にナプキンを取る事のできる人間になる その「円卓」に
この「ファニー・ヴァレンタイン」が座る事になるのだ

 

円座に座っている状態でどちら側のナプキンを取るかという話ですが、

ヴァレンタイン氏は「はじめにナプキンをとったものに従う」ということを行っています。

広義で解釈すれば、市場をとった者に従うという、現在の状況に近似できるのではないでしょうか。

一個人としては、乱立するサービス、アプリケーションの中でどれが、一番利便性が高い、利用者が多いサービスになるかを見極めて使用していくのがいいと思われます。

 

まとめ

モバイル決済アプリpaypyaの大型キャンペーンではネットワーク外部性、シェアの獲得の重要性に企業がどれだけ注目しているかが垣間見えたと思います。

 

 

あなたが患者になったとき,医者とスムーズに方針決定するために知っておくべきこと.

 

 

一般的に患者と医者の間では意思決定の方法が違うと考えられています.

 

医者の判断基準

 1.客観的なデータ

  ほとんどの医者はガイドラインや論文などの大多数の患者から得られた客観的なデータを診察,自分の治療方針に使っています.

 

 2.経験

  また一般的な病院に勤務している医師であれば,その疾患をもつ患者さんを多数みており,考えられる経過,治療の効果などについて経験をもっているでしょう.

 

 3.患者さんの状態

  いくらその病気に対して第一選択とされている治療でも,その患者さんのコンプライアンスや,合併症の観点から推奨されない場合があるためです.

  

 合理的で確実な治療の選択

 医師は医学的に合理的,妥当な選択をしていき,できるだけ効果が確実で失敗が少ない確実な治療を選択する傾向があります.

 

残念ながら,患者さんは多くいらっしゃるので,治療方針の決定などにはあまり感情は関与せず,客観的な,ある意味ドライな意思決定を行っているのです.

 

 確実な治療を選択する傾向として,例えば,風邪と思っても重症化予防に抗菌薬を処方したり,薬の選択に迷った際には効果が多少違っても副作用の少ない方を選択するなどがあります.

 

リスク(副作用)の大きい治療は副作用の割合,内容を細かく説明する必要があり,仮に薬の副作用が発生して,患者さんがその内容について説明されておらず,重篤な障害が残った際には薬剤の説明義務違反に問われることもあるからです.

 

 

患者さんの判断基準

 一方患者さんには多数の判断基準があり,個人の考え方,環境によって大きく異なるのが現実です.

 がんや手術であれば一生に一度の問題になることもあります.

 価値基準,感情によって様々なバイアス(いわゆる偏見といってよい)が生じることが証明されています.

 

このように医者と患者さんでは根本的に考え方が異なるため

医師「○○の治療法は□□と△△があり,両者の治療の違いは〜〜で副作用はそれぞれ・・であると考えられます.□□は効果が大きいのですが,副作用も大きく,身体に優しい△△の治療を選択する方法もあると思います.

 あなたはどちらの治療を希望されますか??」

 

患者さん「 ・・・ちょっと考えさせてください」

 

医師  「・・・」

 というように,十分に丁寧に説明をしても相手(患者や家族)が(理解力が)悪かったと片付けてしまっているケースがあります.

 

 

 インフォームド・コンセントという意思決定の方法は,「人間は合理的に判断し,選択可能な生き物であるという考え」に基づいているといっていいでしょう.

 

しかし,医療についての知識や経験が欠如している患者さんやその家族が合理的に考えるという前提には無理があります.

また人間の意思決定には合理的な決定から系統的に逸脱する傾向があります.

 

そのため,現在のインフォームドコンセントでは医師がすべての情報を提供して患者さんに選んでもらうというスタイルになりますが,

逆に合理的な意思決定ができない可能性があります.

 

 

 

この合理的な考えから逸脱する傾向というのは行動経済学という学問で説明可能であり,両者の溝を埋める方法として有効なので紹介します.

 

行動経済学とは  

人間がかならずしも合理的には行動しないことに着目し、伝統的な経済学ではうまく説明できなかった社会現象や経済行動を、人間行動を観察することで実証的にとらえようとする新たな経済学。

2002年に行動経済学者のダニエル・カーネマンノーベル経済学賞を受賞して以来、脚光を浴びるようになった。

カーネマンが心理学を修めたこともあって、経済モデルに人間の心理を組み込み、経済実験やアンケート調査などを駆使する特長がある。
 従来の経済学(新古典派)は、合理的で、利己的で、金銭的利益を最大限追求しようとする「完全な個人」をモデルとして、精緻(せいち)な理論を構築してきた。しかし日本経済がバブル経済期に株式や土地投機に熱狂して大きな損失を被ったように、人々は合理的とはいえない行動をとるケースがままある。こうした非合理性な人間の行動に一定の法則性をみいだし、行動の癖や傾向を明らかにするのが行動経済学である。

 行動経済学とは - コトバンク

 

つまり,「非合理性な人間の行動に一定の法則性をみいだし、行動の癖や傾向を明らかにする」

ことが行動経済学であり,

患者さんは常に合理的な選択をするはずという医師の誤った考えと患者さんの溝を埋めるのに有効なのです.

 

行動経済学における重要な概念

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 1.行動経済学的特性

  人は合理的に意思決定をしているように考えられていましたが,現在では非合理的な行動をするというふうに捉えられています.

非合理的な行動をする原因として,不確実性下での意思決定という制約がつくためです.

そのような意思決定モデルとしてプロスペクト理論が提唱されています.

プロスペクト理論

特に金融や医療など不確実性下での意思決定は確実性効果,損失回避を元にした意思決定モデルの1つです.

 1.確実性効果

 確率加重関数では人は低い確率を過大評価したり,実際には高い確率と考えられる数値でも過小評価するという特性を表しています.

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 2.損失回避 

 次の項目でも説明しますが,人の心理として利得<損失であるため同じ金額の利益と損失でも心理的負担としては損失の方が大きくなることが知られています.

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投資だけでない! 日常にもよく見られるプロスペクト理論 | 精神科医による辛口投資論

このプロスペクト理論を用いると,副作用などの損失が考えられる治療はたとえ,副作用の確率が小さかったとしても確率加重関数の理論により低い確率を過大評価したり,損失を嫌うことで,治療に躊躇するということが考えられます.

 ①損失回避

 絶対に損をしたくないという心理で損失がでる行動を回避してしまう心理のことです. 

例えば,硬貨を投げて,数字の面が表に出たら,あなたは1万円を獲得.

もし裏が出たらあなたは私に5,000円を支払う

このようなギャンブルがあったとします.

多くの実験によると,このようなシチュエーションでは
ほとんどの人がゲームに参加しないことが明らかになっています.

 それは“損をしたくない”という感情が強く働くためです. 

人は利益がでたことによる喜びよりも,損失の苦痛のほうが2~4倍大きく感じるといわれています.

 医療の現場では抗がん剤など治療を開始,もしくは変更が必要な場面で現状から健康が損なわれてしまうという損失の面を強く感じて治療を拒否するケースなどがあるでしょう.

 ②現在バイアス

 未来の利益よりも目先の利益を優先してしまう心理のことです.

例えば,今もらえる5万円

1年後にもらえる7万円
どちらかを選ばなければいけない場合どちらを選びますか?

 

合理的な判断としては1年後にもらえる7万円と,現在5万円をもらって1年投資,運用して得られる金額とを勘案して決定するということになります.

 

しかし,未来の喜びというものはなかなか想像しにくいものですし,逆に目の前の利益があらわれたときに人の心は動いて行動に影響を与えてしまいます.

 

ダイエット,運動,禁煙など始めた方がいいことはわかっていても,目先の欲求に負けて始められない場合や,つらい意思決定をする必用がある際に生じる,先延ばしという状況が想定できます.

 

 ③社会的選好

 自分以外のことを考慮して行動する心理のことを指します.

従来の経済学では,自分の利益のみを最大化するような人を想定していました.

ですが,さまざまな検証で他者の状態を考慮したり,相手の行動に合わせて行動したりする主体がいることがわかっています.

利他性や互恵性などもこの範囲に入るとされています.

 

 2.限定合理性

  合理的であろうと意図するのですが,認識能力の限界や思考費用がかかるため直感的に判断することで限られた合理性しか持ちえないことを指します.

 

 ①サンクコストバイアス

 サンクコストとは“埋没した費用”という意味です.過去に支払った費用や,努力のうち戻ってこないものをさします.

サンクコストバイアスとはすでにお金や時間を支払ってしまったという理由だけで損なことを続けてしまう心理を指します.

 

  ②意志力

 精神的,肉体的に疲労している状態では意思決定力そのものが低下していることを指します.

 患者さんの多くは肉体的,精神的に疲労していることが多く,難しい意思決定をすることが困難な場合があります.

 

 ③選択・情報過剰負荷

 選択肢,情報を十分に提示することは必須と考えられます.

しかしマーケティングの分野などで過剰な選択肢,情報量は逆に意思決定の低下につながるとされています.

情報量が多すぎることによって,選択することに対して大きな困難やストレスを感じてしまうためです. 

そのため医療の現場では重要な情報をわかりやすく提示する必要があります.

 

 ④平均への回帰

 データに偏りがあったとしても,いずれ平均値へと近くなる現象のことをいいます.

例えば,両親の身長が平均より高かったとして,子供の身長がさらに平均を超えて高くなるかというと,そうではなく,平均値に近づく確率が高くなると言われています.

 

 ⑤メンタルアカウンティング

 「心の会計(心の家計簿)」とよばれ,人が何か意思決定をする際に,様々なことを勘案して総合的(合理的)に判断するのではなく,狭いフレームの中で判断してしまう心理のことをいいます.

 例として,「あぶく銭は散財してしまう」,「給料は大切に使う」というように,お金の入手方法に応じて使い方を変える傾向があります.

 

 3.ヒューリスティック

  ヒューリスティックスとは,「近道による意思決定」や「意思決定をしたり判断を下すときに,厳密な論理で一歩一歩答えに迫るのではなく,直感で素早く解に到達する」方法のことをさします.

 正確に計算したり,情報を集めたりして,合理的な意思決定を行うことと対照的な方法です.

 ヒューリスティックスにも様々な種類があります.

 

 ①利用可能性ヒューリスティック

 正確な情報を手に入れないか,そうした情報を利用しないで,身近な情報や即座に思い浮かぶ知識をもとに意思決定を行う心理のことを指します.

 例として,医師が提示する医学情報ではなく,新聞広告や知り合いが受けたという薬,治療法を信じることが利用可能性ヒューリスティックである. 

  

 ②代表性ヒューリスティック

 合理的意思決定ではなく,似たような属性だけをもとに判断することです.

 医療者側では患者さんの年齢,基礎疾患で病気を推測しがちなこと,患者さん側では所属している病院や噂などで医師を判断してしまうことなどが挙げられます.

 

 ③アンカリング効果

 印象的な情報を付加することで行動に影響を与える心理効果です.

行動経済学で注目されてからマーケティングの定石の一つになっています.

 新聞やテレビでの「癌が消えた」,「痛みがなくなった」など印象的な情報を伝えて,その治療法に誘導する方法と考えられます.

 

 ④極端回避性

 「松竹梅の法則」とも言われています.同種の商品が上・中・下の3種類あった場合に,中間の値段の商品を選ぶ傾向にあります.

これを「極端回避性」といいます.

 

 ⑤同調効果

  相手に自分と共通の事柄があると安心感や親近感を覚える心理効果です.

私達は同僚や隣人の行動をみて,自分の意思決定をする傾向があります.

アンカリング効果,代表性ヒューリスティックと相まって,身近な人の治療効果がよさそうに見えた際に,同調効果が働いて治療選択するということがよくみられます.

 

現状維持バイアス

 もう一つ現状維持バイアスという概念も存在します.現在バイアスの派生と考えてもいいのですが,不確実な未来よりも,現在の状態を維持することを希望しがちであるという意味で損失回避の概念もが発生していると考えることができます.

 

 また保有効果という,既に所有しているものの価値を高く見積もり,ものを所有する前とあとでそのものに対する価値を変えてしまう特性が働き,現在の状態を所有しており,変更することを嫌うという性質があります.

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行動経済学的対策

 これらの行動経済学的特性から考えられる対策を挙げていきたいと思います.

 

フレーミング

同じ中身のものだとしても表現の方法次第では相手の印象を変えることができる効果です.

同じ情報を伝える際に,その表現の仕方次第で,伝えたいメッセージをより強調することができる.

簡便,伝える情報の中身を変える必要がないことがメリットです.

 

ナッジ

直訳すると「ひじで軽く突く」という意味です.

強制によってではなく自発的に望ましい行動を選択するよう促す仕掛けや手法を示す用語として用いられます.
ナッジには

 ①直接推奨:自分の意見を伝えて,最善の方法と説明する.

 ②規範の提示:多くの患者さんは〜と説明する.

 ③利得の提示:相手にとってのメリットを提示する.

 ④利得の提示(他者):患者以外の家族へのメリットを提示する.

 ⑤社会的な負担:社会保険など社会的な負担を提示する.

 

などの方法があります.

特に患者への心理的な負担を与える可能性があることには注意が必要です.

また患者の意思を誘導するものであってはいけないと考えられます.

しかし一方で,本人に決めさせさえすれば,医療倫理における「自律原則」が保持されて倫理的であると言えるかどうかは疑問です.

学情報を適切にもたない患者さんの選択に対して,

「患者の選択だから」と自己決定権が守られていればいいというのは倫理的に間違っていると思われるからです.

またナッジは意思決定者の希望と逆方向にまで誘導できるものではないことも研究で証明されています.

そのため患者さん側は判断に迷ったら,「先生だったらどうしますか?」という選択肢に対する医師の回答は参考になるでしょう.もちろん,その医師が信頼に足るかどうかはしっかりと検討してください.

また医師の側も,自分が家族だったらという思いで,自分の意見や他の患者さんの傾向を説明するということはスムーズな方針決定に有効だと思います.

週末読書

読書は人生を豊かにしてくれます.

今日も非常に有意義な読書をすることができました.

 

 

イーロン・マスク 未来を創る男

イーロン・マスク 未来を創る男

 

 

 

amazon 世界最先端の戦略がわかる

amazon 世界最先端の戦略がわかる

 

 

イーロン・マスクの書籍からは徹底すること,常に先をみすえること,大きなビジョンをもつこと,ハードワークをすることを学びました.

 

amazonの経営戦略の書籍からはamazonのプラットホームとしての戦略やM&Aの方法,現在多数あるサービスも,撤退した事業の中から残った分野であることを勉強しました.

 

ビジネスの世界は競争が激しく,突出するためには戦略が必要であることは想像に難くありません.

その一端を知ることができるだけで優秀なビジネス書と言えると思います.