はじめに
人工膝関節全置換術(TKA)の適応疾患と禁忌症例について解説しています.
一般的に化膿性膝関節炎の症例ではTKAは禁忌ですが,発症後に治癒し,十分な期間が経過している症例では相対的禁忌として施行を検討してもよいと考えられています.
TKAの適応
変形性膝関節症
|
膝関節周囲骨壊死
|
関節リウマチ
|
膠原病による膝関節
破壊
|
膝関節周囲骨軟部腫瘍切除後
|
膝関節周囲外傷後変形による膝関節症
|
血友病性関節症
|
Charcot関節
|
透析性膝関節症
|
TKAの禁忌
絶対的禁忌
・活動性の化膿性膝関節症
活動性の感染がある膝へのTKAは禁忌である.
・重度の膝伸展機構不全
術後不安定性を引き起こす可能性が高く,膝伸展筋力のない下肢へのTKAは適応とならない.
相対的禁忌
・化膿性膝関節症や膝周囲の骨髄炎の既往
適切な治療が行われ,3ヶ月〜半年以上経過し,穿刺などで複数回の培養陰性が確認できていれば,手術は可能であるが,感染のリスクが高いことを十分説明,理解する必要がある.
・下肢の血流障害
重度な下肢の血流不全では術後,創あるいは下肢の合併症を高率に発症する.下肢切断や死亡に至る例もあり,TKA前に血行再建を考慮する.
・膝関節以外の部位の繰り返す感染症(尿路感染など)
・認知症,知的障害,手術に関する理解が得られにくい場合
・全身性の活動低下により,手術により歩行が期待できない場合.
(勝呂徹編著,人工膝関節全置換術のすべて, 第2版.p32−38)