整形外科学的考察を行うブログ

Daily Orthopedics ~整形外科チャンネル~

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爪下血腫,爪下出血斑とは,治療方法とその適応

 

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爪下血腫とは

・圧挫傷で生じ,爪下に血液が充満し黒色を呈します.
・敏感な爪床と爪母に対する圧力が増加することにより,強い痛みを生じますが,一般的に24−48時間で痛みは改善します.

爪下出血斑とは

・圧挫傷を負った際に生じ,爪の下において明るめの褐色ないし,青褐色に変色をきたします.
・足趾に軽微な外傷を繰り返した際に疼痛を伴わずに生じることがあります.(テニス趾)

するべきこと

・高度な外力,疼痛など骨折が懸念される場合はX線写真を撮影します.
・外傷歴がない場合や疼痛を伴わない場合は悪性黒色腫,カポジ肉腫やその他の腫瘍の診断を考慮する.
・周囲の裂創,持続する出血,爪の損傷がある場合は爪床の損傷を疑います.指ブロックを行い,爪を外して爪床を確認し,必要に応じて裂傷を修復します.

ドレナージの適応

・高度の疼痛で患者の希望がある場合にドレナージを検討します.
・安静時の疼痛がない場合には一般的にドレナージは不要です.
・疼痛がある場合でも,ある程度時間経過した場合には,ドレナージで症状は改善がなく,感染リスクが増大するだけであることを説明しましょう.

ドレナージの方法

・一般的に麻酔は不要です
・爪をイソジンで消毒し,18G針や加熱したペーパークリップを押し付けて行います.
・穿孔するのは爪部だけとして,爪床を傷つけないように注意します.

ドレナージ後の処置

・持続的な出血が続く場合はガーゼを折りたたんで,しっかりと圧迫することで抑えることができます.
・抗菌性軟膏を塗布し,穿孔部位をバンドエイドで覆います.
・予防的な抗菌薬は不要ですが,糖尿病や末梢血管障害のある患者や免疫不全のある患者にはセファレキシン(ケフレックス)を短期間投与しても許容されます.

ドレナージ後の説明

・感染を防ぐために約1週間,汚染された水に指を浸けないように説明します.
・感染の徴候(痛みの悪化,発赤,腫れ,発熱)がないか観察し,これらが発生した場合はすぐに受診するように指示します.
・骨折している場合は,アルミ製の指先保護用シーネ(副子)の使用を検討します.
・爪はいずれ脱落し,3~6ヶ月後には新しい爪が生えてくることを説明します.

爪下血腫で血腫が少量の場合

・冷却,鎮痛薬投与で保存的に経過を見たほうが無難です.
・爪が伸びるとともに血腫は消失し,1−2ヶ月で黒く変色した爪も脱落します.
 

爪脱臼の場合にはドレナージされているため縫合で対処しましょう.

tm-ortho.hatenablog.com

爪床損傷には下記リンクのように対処してみてください.

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