・「爪を怪我してどうしたらいいかわからない」
・「爪の怪我がきてどう対処しようか」
・この記事は診断から対処法についての目安となることを目標に書いてみました.
・特に爪脱臼,爪剥離に対する初期対応と縫合法であるシラー法について解説しています.
・診察,X線検査で合併損傷の有無を評価しましょう
・爪脱臼は18G針で爪に2箇所穴をあけ,ナイロン糸でシラー法で縫合しましょう
爪の解剖,名称
まず基本的な爪の解剖図です.
https://www.qlife.jp/dictionary/item/i_242163000/
- 爪自体の損傷部位 爪甲,爪根か.
- 軟部組織の損傷の有無 爪床,爪母の損傷があるか.
- 伸筋腱や末節骨の骨折があるか
これらを確認してください.
初期対応,検査
- 標準的な問診:受傷起点、直接損傷の場合は汚染の有無
- 指の知覚機能,運動機能診察,伸筋腱断裂に注意して診察する
- 単純X線写真:末節骨骨折の有無の判断
爪脱臼のみの場合
・爪根の位置異常を生じていて,骨折がない場合は爪脱臼となります.触ってみて爪がカパカパと動けば不安定性あり縫合の適応です.
・指ブロックで受傷指に麻酔を行います.
・十分に洗浄して創部を確認します.
・爪床の損傷がある場合は別記事を参照に縫合を行ってください.
・爪床の縫合は専門医へコンサルト(手外科,形成外科,整形外科)が必要です.
・爪床損傷がない場合はシラー法で爪を整復します.
・爪がいくら剥がれていても創部の保護目的に爪を戻してあげた方がいいです.
私は18G針で爪に2箇所穴をあけて,4−0ナイロンで縫合するようにしています.
末節骨骨折+爪脱臼
・爪脱臼に骨折を合併することはよくあります.
・指ブロックを行い,爪脱臼部位を確認すると末節骨が露出します.
・開放骨折となりますので,創部保護のために爪の存在がさらに重要になります.
・整形外科医へコンサルトして十分な洗浄,固定を行う必要があります.
・十分に洗浄後,シラー法で爪を縫着して,指尖用のアルフェンスシーネをあて,Buddy tapingで固定を行います.
患者への説明
・後日判明する骨折の可能性があること
・感染の可能性があること
・爪が生えかわるのに約6ヶ月かかること,爪変形の可能性があること
などを説明します。
後療法
・創部にゲンタシン軟膏®などを塗布してガーゼ圧迫とします.
・ケフラール®,ケフレックス®などの抗菌薬を2日投与,翌日の整形外科受診を指示します.
・創傷処置でコストを算定します.
爪床損傷についてもまとめています.爪床損傷の縫合はこちらをご参照ください。
こちらの書籍を参照しています.