脊髄損傷の原因と病態
・脊椎の脱臼や骨折による脊髄の圧迫により生じます.
・頚椎では,もともと脊柱管が狭くなっている人や頚椎後縦靭帯骨化症,頚椎症などで脊髄の圧迫が存在している人が転倒などによって衝撃が加わることで脊髄損傷が生じることがあります.
・以前は交通事故などの高エネルギー外傷によるものが多かったのですが,近年は高齢化により高齢者の転倒による受傷が最多となっています.
・受傷外力による物理的な損傷による一次損傷と.出血や炎症を起点とした細胞死や脱髄により損傷範囲が拡大する二次損傷があります.
・手術を行うこともありますが,一般的に生じた麻痺を改善させることは困難であり,損傷範囲拡大の予防や固定術による安定化によって早期にリハビリを開始させることが目的です.
評価法
Frankel分類
・脊髄損傷の重症度による分類です.
・Grade AからEまでの5段階の区分があり,アルファベットがAに近いほど障害の重症度が高くなります.
・分類の方法は運動障害と知覚障害の有無により分けられます.
AISA impairment scale (AIS)
・Frankel分類と同様に運動障害と知覚障害による重症度の分類です.
・GradeA〜Eまでで下の表を使って詳細を評価します.
ASIA key muscle
C5
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肘屈曲
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C6
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手関節背屈
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C7
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肘関節伸展
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C8
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指屈曲
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T1
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指外転
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L2
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股関節屈曲
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L3
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膝伸展
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L4
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足関節背屈
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L5
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母趾伸展
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S1
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足関節底屈
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ASIA sensory point
C4
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肩峰
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S1
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踵外側
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C5
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腕橈骨筋
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S2
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膝窩
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C6
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母指球
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S3
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臀襞壁中央
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C7
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中指球
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S4–5
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肛門皮膚粘膜移行部
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C8
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小指球
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T4
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乳頭部
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T7
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剣状突起
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T10
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臍部
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L2
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大腿内側中央
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L3
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膝蓋骨内側
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L4
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内果
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L5
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足背内側
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AISの変化.予後
(Scivoletto G, Tamburella F, Laurenza L, Torre M, Molinari M. Who is going to walk? A review of the factors influencing walking recovery after spinal cord injury. Front Hum Neurosci. 2014;8:141. Published 2014 Mar 13. doi:10.3389/fnhum.2014.00141)
受傷から72時間目,30日目の評価と1年後のAISを報告した論文があります.
AIS Aでは8-9割がAIS Aの完全麻痺のままです.
AIS Bでは2-3割が改善
AIS Cでは5-6割が改善
AIS Dでは8-9割が改善すると報告されています.
受傷時の麻痺の程度が大きく影響することがわかると思います.
今後はAIS AやBの重症な麻痺を改善させるための方法を検討することが喫緊の課題と言えるでしょう.