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ベーカー嚢腫とは、膝の裏の腫れ、治し方の1つステロイドについて解説

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膝の裏が腫れる病気であるベーカー嚢腫について解説します。

今回の要約

・膝関節の裏側に液体が貯留する疾患です

・無症状では経過観察ですが、注射、手術の方針もあります

ベーカー嚢腫とは

・膝窩部の滑液包に関節液が流入し、嚢腫を形成する疾患です。

・原因には変形性関節症、半月板損傷、関節リウマチ、結核などの化膿性関節炎があります。

・大腿骨内側顆後方に好発します、関節腔との交通が40~60%に認められるとされます。

・症状がなく、診察やMRIで見つかる場合もあります。

・症状がある場合は膝裏の緊満感や鈍痛が多いです。

・さらに腫瘤が大きくなると膝関節可動域制限や屈曲位で疼痛が出現します。

検査

・関節疾患を疑う際には単純X線写真、感染を疑った場合は血液検査をオーダーします。

・エコーで液体貯留を確認できます。

MRIでは液体貯留を反映してT1強調像にて低信号、T2強調像にて高信号を呈します。

・18G針の穿刺で黄色透明な液体が得られれば、ほぼ診断は確定します。

治療

・無症状であれば経過観察を勧めます。

・穿刺でドレナージした後に、包帯などで圧迫します。

・腫瘤が再度増大するようであれば、再度の穿刺、ステロイド剤の嚢腫内注入を検討します。

ステロイドデカドロン1.65mgが選択されます。

・変形性膝関節症や関節リウマチなど原因となっている疾患の治療を平行して行います。原疾患の治療で症状が改善する場合もあります。

・何度も再発し、症状を呈する場合は外科的摘出術が選択されます。

・近年では関節鏡を用いた関節と嚢腫の交通部の開大を検討します。

質問事項のまとめ

冷やした方がよいか

・嚢腫自体は冷やすことによる効果はありませんが、膝関節自体の痛み、関節炎がある場合は冷やすことも有効だと考えられます。

何科を受診すれば良いか。

・整形外科の受診をお勧めします。

サポーターはした方がいいか

・圧迫は効果があるので、締め付けすぎない程度のサポーターの使用はお勧めできます。

湿布

・腫れ自体に効果はないのですが、関節痛、関節炎には効果があるので使用をお勧めします。

マッサージ

・受けていただいて大丈夫ですが、腫れてる部分を強く圧迫しないようにしましょう。

【参考文献】

・Duncan S Van Nest, Fotios P Tjoumakaris, Bradley J Smith, Tricia M Beatty, Kevin B Freedman. Popliteal Cysts: A Systematic Review of Nonoperative and Operative Treatment. JBJS Rev. 2020 Mar;8(3):e0139. doi: 10.2106/JBJS.RVW.19.00139.

*膝関節レントゲン写真のみかたはこちらを参照

tm-ortho.hatenablog.com

*人工膝関節の作図はこちらを参照

 

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