肩関節障害はアスリートや中高年に好発し、高齢者では転倒による上腕骨近位端骨折も頻度が高い疾患です。
この記事では肩関節のレントゲン写真の撮り方、見方について解説していきます。
【正面像】
X線を正面から照射して撮影する方法です。各骨皮質の不整の有無,関節裂隙,脱臼の有無を確認します.
(https://ce4rt.com/positioning/radiographic-positioning-of-the-shoulder/)
Acrominonは肩峰、Glenoidは関節窩、Coracoidは烏口突起を意味します。
各部位の骨折は詳細に分類されており、損傷の重症度の判定、治療方針の決定に役立ちます。
鎖骨外側端骨折:Craig分類
肩鎖関節脱臼:Rockwood分類
上腕骨近位端骨折:Neer分類
肩甲骨骨折:Ideberg分類
成長期の上腕骨近位骨端線損傷(骨端線の幅は成熟度によって異なるため健側との比較が必要です。)
腱板断裂:肩峰骨頭間距離<6mm、肩峰前下方から烏口肩峰靭帯内部をのびる骨棘、関節窩後下方の骨棘、大結節の嚢胞状陰影、大結節欠損はは腱板断裂の存在を示唆する。確定診断には超音波、MRI検査が必要です。
石灰沈着:棘上筋腱と棘下筋腱が重なる部分や肩甲下筋腱の近位付着部に生じやすいとされます。
骨頭変形:関節裂隙の狭小化は変形性関節症、関節リウマチを疑う。骨頭の帯状硬化像は骨頭壊死を示唆します。骨頭後上方の陥没Hill-Sachs損傷と呼ばれ肩前方脱臼の既往を示します。
肩関節脱臼の9割以上は前方脱臼で正面像で診断が可能です。
関節窩前下方の小骨片:肩前方脱臼で生じた下関節上腕靭帯の関節窩側裂離骨折を骨性Bankart損傷と呼びます。
著しい関節破壊:関節の骨破壊が著しいがあまり疼痛がない場合にはCharcot関節(神経病性関節症)を考えます。
【軸射像】
肩関節脱臼の脱臼方向の把握、肩甲骨骨折の診断に有用です。
上肢を90°外転させ,肩甲上腕関節にむけて30°近位から遠位方向へ射入します。
標準的な撮影方法ですが、外傷患者さんでは疼痛のために撮影が難しいこともあります。
(https://ce4rt.com/positioning/radiographic-positioning-of-the-shoulder/)
【スカプラY撮影(肩甲骨側面撮影)】
肩関節脱臼の脱臼方向の把握、肩甲骨骨折の診断に有用です。
肩峰の形態(Bigliani分類)、肩峰下骨棘の評価に必要な撮影方法です。
上肢下垂位で撮影側を前にした斜めの肢位で撮影します、外傷患者さんで汎用される方法です。
単純X線写真では下記のように描出されます。
5. 上腕骨
6. 上腕骨頭
8. 肩峰
9. 肩鎖関節
10. 烏口突起
11. 鎖骨
14. 肩甲骨下角
16. 肩甲骨体部
【ストライカー撮影】
・Hill-Sachs病変(肩関節脱臼時に上腕骨頭が肩甲骨の縁に衝突することで発生する上腕骨頭側の病変です)
・Benetto骨棘などの描出に有用です。
そのためアスリート、脱臼歴がある方に有用な撮影方法です。
撮影方法:仰臥位,上肢を135°挙上し,管球を腋窩にむけて垂直(尾頭方向に10°)入射します。