・足関節の単純X線写真では内旋位で撮影するMortise viewも重要です.
・骨折が明らかでなくても捻挫(靭帯損傷)の可能性もあり,遠位脛腓関節部にはシンデスモーシスという構造が存在します.
【構造】
・距腿関節:凸面形状の距骨滑車が同様の凹面形状の脛骨天蓋関節面に組み合わさり,側方は内果,外果の関節面で取り囲まれた安定性の高い骨構造をしている.
・靭帯:内側は三角靭帯と総称される多数の靭帯複合体が存在する.外側は外果前下方から距骨頚部に向かう前距腓靭帯,外果前下方から踵骨外壁に向かう踵腓靭帯,外果後内壁から距骨後外縁へと広がる後距腓靭帯の3本存在する.
・運動方向:底屈(0-45°),背屈(0-20°),内/外がえし(それぞれ0-30°).
【単純X線写真】
ー正面像
・足関節周囲の骨折や,骨性変化の描出に有用です.内側の関節裂隙(medial clear space)の開大は内側の三角靭帯断裂などの不安定性などを示唆します.
・Distal tibiofibular overlap > 6 mmが正常
・medial clear space <3mmが正常
ー側面像
・関節面や腓骨の位置の描出に有用です.足関節果部骨折はシンデスモーシスの損傷により腓骨が不安定となることがあり,腓骨の位置を確認することに有用です.
ーmortise view
・15〜20°内旋位で撮影します.
・遠位脛腓関節の描出に優れています.
・Distal tibiofibular overlap > 1 mmが正常
・lateral clear space <3–6 mmが正常
http://www.radtechonduty.com/2012/09/ap-mortise-projection-15-to-20-degree.html
・脛骨は下面から見ると,前側が張り出した構造となっており(図:左),通常の正面像では脛骨前外縁と腓骨が重なっています.
・そのため足関節を内旋させることで脛骨外側の構造が一直線となり,脛腓関節を描出することが可能となります.
【捻挫の疫学】
【シンデスモーシスとは】
.田野敦寛ら. ー新しい解剖学的知見から考えるー遠位脛腓靭帯結合(シンデスモーシス)損傷. 臨床整形外科. 2022;57(1):23–30.
【内果骨折の分類と治療法】
Herscovici分類
前後方向の単純X線写真で骨折線の高位による分類であり、治療法の選択にも有用です。
分類
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定義
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治療法
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治療の特徴
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注意点
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Type A
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内果先端の剥離骨折
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Tension band wiring
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スクリュー固定より固定力が2倍
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デメリットとして、皮切が大きい、ワイヤーによる皮膚刺激症状がある、手技が煩雑、粉砕骨折には適さないことがあり、軟部組織の状態が悪い症例では身長にするべき。
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Type B
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内果先端と天蓋の間に生じる骨折
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partial threadのcancellous screwをlag screwとして使用
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骨端線の遺残部(55mm±10 mm)を超えないようにすると固定性が高い。
骨粗鬆症では対側皮質を貫くと固定性が高い。
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後脛骨筋腱を損傷しないようにanterior colliculusと呼ばれる内果先端の前方部分から挿入する。後方寄りに挿入した場合は抜釘を検討する。
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Type C
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天蓋の高さに生じる骨折
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Type D
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天蓋から斜め上方向に広がる骨折
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プレート固定
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antiglide plate (Buttress plate)としてのプレート固定
プレートは1/3円が多い。
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皮切が大きく、軟部組織の広い範囲の剥離が必要であることに注意する。
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スクリューの安全な挿入位置
内側からのスクリュー刺入は後脛骨筋腱を損傷しないように前方(図でいう①)の部分から挿入することが安全です。
この部位はanterior colliculusと呼ばれています。