腰痛において骨折、感染、麻痺、骨転移などを見逃さないように、「レッドフラッグサイン」という用語は広く知られていると思います。
しかし、腰痛患者さんの診察は整形外科医以外には一般的ではないので診察方法に不安を感じる人は多いのではないでしょうか。
この記事では整形外科医がどのように腰痛患者さんの診察をしているのか、必要な身体診察の方法をまとめしました。
腰痛の診察では仙腸関節、股関節の診察も行うことが重要
診察まとめ
以下が診察をしている内容の総まとめです。簡単にまとめるとお腹を触って圧痛点を探すように、腰を実際に触って痛い部位を確認し、腰、足を動かしてみることが必要です。
腰の診察
主訴:
歩行:正常、疼痛性、不可、麻痺性、痙性、失調性、片麻痺
間欠跛行:(- / +)〜分、〜メートル
症状:疼痛、しびれ、部位:
姿勢:正常、前弯増強、Flatback、後弯、側弯、その他:
可動性
屈曲:正常、制限
FFD (Finger floor distance) knee level / ◯cm with pain -/+
伸展:正常、制限
右側屈:正常、制限
左側屈:正常、制限
右回旋:正常、制限
左回旋:正常、制限
Kemp test -+/-+
神経緊張徴候
SLRT (Straight leg raising test)、Well leg sign、Bragard、FNST(Femoral nerve stretch test)
反射
PTR (膝蓋腱反射)、ATR(アキレス腱反射)、膝、足clonus、Babinski反射
腸腰筋、大腿四頭筋、大腿二頭筋、前脛骨筋、長母趾伸筋、長母趾屈筋、下腿三頭筋、腓骨筋
上記順番にiliop, Quad, Ham, TA, EHL, FHL, Gastro, Peroneal(腓骨筋)などと略します。
5/4/3/2/1/0もしくはN/G/F/P/T/Zと記載し、プラス、もしくはマイナス表記をつけることがあります。
+,ーは基本的に主観ですが、F- :健側可動域の1/2以上full未満、P+ :健側可動域の1/2未満とします。
周囲径
膝蓋骨上10cm、下腿
排尿障害(- / +) 排尿困難、頻尿、残尿感、尿勢低下、失禁
循環
大腿動脈、膝窩動脈、後脛骨動脈、足背動脈
絞扼性末梢神経障害
Melargia paresthesia, piriformis synd, fibular tunnel synd, tarsal tunnel synd
疼痛、しびれ、圧痛の部位、場所
棘突起叩打痛、棘間靭帯圧痛、傍脊柱筋圧痛、上臀神経圧痛、坐骨神経圧痛
それぞれSPPP、ISLT、PVMT、NGST、NITと略される場合があります。
仙腸関節の診察
Newton test、Gaenslen test
股関節の診察
最低限FABEREは行うようにします。
Fabere test
HBD:踵殿間距離(Heel-Buttock Distance,以下HBD)
バランス能力
Romberg試験:両足をそろえて行う方法
Mann試験:両足を前後一直線にしてたってもらい、バランスをとれるかどうかを調べる方法
結果の解釈のポイント
SLRTは感度0.85,特異度0.52とされます。
簡便な診察方法
実臨床でどのように診察をするとスムーズかまとめます。上記すべてを行うのは難しいという方は参考にしてください。
立位にて屈曲、伸展可動域、Kemp徴候の確認をします。
腹臥位にしてSPPP、ISLT、PVMT、NGST、NIT、FNSTの確認(ここでFNSTまで行うと体位変換が少なくてスムーズです)
仰臥位にしてSLRT、MMT、反射、足背動脈の触知
と行うとスムーズに所見が取れると思います。