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手根不安定症 −VISI,DISIとは,整形外科専門医試験にもでます!−

この記事の要約

VISIは月状骨が掌屈(Volar)位となり,レントゲンでは近位手根列アーチの乱れが特徴.

DISIは月状骨が背屈(Dorsal)位となりレントゲンではCortical ring sign,Terry-Thomas徴候が特徴.

【手根関節の機能】

・遠位・近位手根関節は掌屈(屈曲)・背屈(伸展)と橈屈・尺屈運動に寄与します.

・遠位橈尺関節は回内・回外運動に寄与します.

【手根不安定症とは】

・手根不安定症の一種でレントゲンでの手根骨の転位,不安定性によるDISI,VISIなどに分類されます.手根部の靭帯損傷により,手根骨の根骨の異常な運動を来すことで疼痛・可動域制限などを生じる病態です.

・理学所見による手根部の不安定性,X線写真などの画像評価にて診断を確定します.

【補足】手関節運動に関与する筋腱は主に中手骨基部に停止するため,手関節運動の際の手根骨の運動は手根骨間靱帯を介して間接的に行われます.

そのため,手根骨間靱帯の破綻を生じると正常な手関節運動が障害され,手関節の可動域制限や手関節痛を生じるようになります.
手根不安定症の病態は外傷だけでなく,関節リウマチによる滑膜炎などでも生じます.また舟状骨月状骨解離,手根中央関節不安定症など多岐にわたる病態が存在しますし,放置すると徐々に変形性手関節症へと進行していきます.

病期に応じて靱帯再建術や手関節部分固定術などが行われますが,治療難易度が高く専門医の受診が必要です.

【VISI,DISIとは】

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VISI(volar intercalated segment instability)近位手根列掌側回転型:月状骨掌屈有頭骨月状骨角が増大します.月状三角骨靭帯断裂,解離などにより生じ近位手根列のアーチが乱れます.

*月状三角骨解離では近位関節面のアーチに段差が生じ,側面では舟状骨と月状骨が掌屈します.

DISI(dorsal intercalated segment instability)近位手根列背側回転型:月状骨背屈舟状骨月状骨角は増大します舟状月状骨解離.舟状骨偽関節,月状骨周囲脱臼などでみられ,舟状骨の掌屈によるcortical ring signが陽性となります.

【Cortical ring signとは】

・Cortical Ring sign は舟状骨の掌屈により現れる手関節前後像における輪状像であり,その存在は舟状月状骨靱帯の断裂を示唆するとされています.しかし舟状骨のring sign は舟状骨の掌屈は意味するものの,年齢,性別,利き手・非利き手にかかわらず,無症候の手関節に比較的高率に出現し,その出現は必ずしも病的意味をもつものではなかった(1)とも報告されています.

・舟状骨−月状骨間の距離(Scapholunate gap)の3mm以上の開大舟状月状骨解離と呼ばれ,レントゲンでの所見をTerry-Thomas徴候といいます.

・進行すると舟状骨周辺の二次性の関節症をきたします.

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1.安倍幸雄.Scaphoid cortical ring signの臨床的意義−無症候性手関節X線像における検討.整形外科. 2010;61(6):593-595.