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【ALS人工骨頭】についてのまとめ 〜特にTHAとの違い〜

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https://resident360.nejm.org/from-pages-to-practice/total-hip-arthroplasty-or-hemiarthroplasty-for-hip-fracture

 MIS-THAの普及により大腿骨頚部骨折に対する人工骨頭についてもMISが普及しています.

 一般的に通常のアプローチであれば人工骨頭の方が工程が少なく,容易な手術といえますが,MIS-人工骨頭については大径骨頭の分だけTHAよりも大変です.

 今回ジンマーバイオメット社が提供しているALS人工骨頭の動画から,手術ポイントについてTHAとの違いを中心にまとめます.

 以下サイトから医療者は登録することで手術動画を閲覧できます.

www.zimmerbiomet.com

1.皮切

ソフトスポットより軽度背側から始まり,無名結節より軽度腹側に向かう直線上皮切でTHAと同様です.

2.展開

筋膜の切開についてです.
近位は大腿筋膜張筋に切り込み,中間部は無名結節の背側1/3,遠位部は骨間中央となるJカーブとなっています.
すなわち筋間を同定して,近位は筋間より腹側から始まり,筋間を交差するように背側へ切り下げ,再度筋間へ切り上げるようにして操作性を上げています.
THAではZ字状や筋間を頂点としてへの字型,J型があり術者の好みによる部分と考えます.
レトラクターのかけかたはTHAと同様です.

3.関節包切開

人工骨頭では安定性を損なわないように腸骨大腿靭帯垂直束を温存する場合が多いですが,人工骨頭では整復操作のために切離する必要があります.
そのため関節包の切開もサドル付近の近位側から始まり下前腸骨棘へ向けて切り上げて行きます.その後,寛骨臼に達したあとは関節唇を損傷しないように注意しながら後縁を剥離していきます.
その後,サドルに付着する腸骨大腿靭帯水平束を切離します.
関節包の切開位置,剥離部はTHAと異なる内容でした.
その後のステム挿入手技,整復についてはTHAと同様ですが,頚部骨折で骨脆弱性が強く,術中骨折には最大限注意する必要があります.

4.まとめ

ALSアプローチでの人工骨頭について簡単ではありますが,まとめてみました.股関節外科医であればALS-THAの導入として,レジデントの先生であればMISの導入としてちょうどいい難易度であり,患者さんにとっても低侵襲,早期回復,脱臼率の低下に寄与するため大変有望な分野かと思います.

ただし無理な操作は禁物で安全性には十分注意していくことが必要でしょう.