【構造】
・体幹,下肢を連結する球関節で立位,歩行において最も重要な役割を果たします.
・構成する骨は寛骨と大腿骨です.骨盤側の関節部分は臼状になっており,寛骨臼と呼ばれます.大腿骨側は球状であり,大腿骨頭と呼ばれます.
・寛骨は腸骨,恥骨,坐骨で構成され,ちょうど寛骨臼の中央で3つの骨は接しています.幼少期には軟骨で接しているためY軟骨(triradiate cartilage)と呼ばれます.
・大腿骨の近位は大腿骨頭,大腿骨頚部,大転子,小転子で構成されます.
・大腿骨頚部は長軸に対して頚体角(neck shaft angle)を持って傾いており,膝関節の顆部からみると頚部は前方に捻れており,前捻角と呼ばれます.
・頚体角は新生児(130°)→乳幼児で大きくなり→成人では減少して125−130°程度となります.
・前捻角は小児期には大きく→成人では減少して平均20°程度になります.
【単純X線写真】
−正面像
・骨の配列,骨折線の有無,石灰化,骨化の有無を確認します.
・読影はABC,すなわちA:アライメント,B:骨(Bone),C:軟骨(Cartilage)に準じて確認していきます.
・左右両方の股関節が撮影されるため,左右の比較をすることもできます.
・股関節のほか,腸骨,恥坐骨の仙腸関節,恥骨結合など多くの部位が含まれます.
-軸位像
・いわゆる側面像は軸位像,後述のラウエンシュタイン像がありますが,外傷患者では軸位像が一般的です.
・股関節を斜め方向から撮影し,股関節頚部を詳しく見ることができます.
・角度調整が難しく,撮影時間自体長くなってしまいますが,股関節を動かす必要がないので,痛みを軽減して写真を撮影することができます.
−ラウエンシュタイン像
・斜位撮影に近く,痛みがある方の足を横に倒して撮影します.
【涙痕,Tear dropとは】
・涙痕という用語は解剖学的名ではなく,X線像上での名称です.
・大腿骨頭の内側に位置し,U字型.涙のしずくに似た陰影として描出されます.
・外側は寛骨臼底(寛骨臼窩)で形成され,内側は小骨盤腔(寛骨臼の内板:quarilatral spaceとも呼称されます)で形成されます.
・臼蓋の前壁・後壁はそれぞれCTの横断面では右図のように描出されます.単純X線ではそれぞれを確認するのは困難です.
・人工股関節全置換術(THA)ではカップ設置位置の指標となります.一般的にカップCE角が0°以上になるように内方化する必要があるので,涙痕の内側に接するように術前計画を立てる場合があります.
−大腿骨頭すべり症
・大腿骨近位骨端が大腿骨近位骨端線(成長軟骨板)で離開して,後方へ転位する成長期特有の疾患です.