整形外科学的考察を行うブログ

The Bone Identity ~整形外科医の日常~

整形外科医による日々のつぶやきです.

人工関節周囲感染における尿路合併症の影響 JBJS abstractの和訳

自分の勉強を兼ねて,細々と始めます.

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人工関節周囲感染における尿路(泌尿器)合併症の影響と和訳しました.

 

人工関節置換術で特に問題となる感染ですが,尿路感染症,特に無症状の膀胱炎などがある際の対応については様々な意見があると思います.

 

背景

人工股関節全置換術(THA)または人工膝関節全置換術(TKA)後の人工関節周囲感染症は重大な合併症であり、泌尿器科合併症との関連性について相反する報告がある。我々の目的は、尿路感染症(UTI)および尿閉(AUR)がTHAまたはTKA後の感染症の重大な危険因子であるかどうかを検討することです.

 

方法

2003年4月から2013年3月の間に最初のTHAまたはTKAを受けた66歳以上の患者を対象に後ろ向きコホート研究を行った.

調査対象の曝露は,関節置換後2年以内の治療を要するUTI, THAまたはTKA後30日以内の尿閉とした.

主要アウトカムは,THAまたはTKA後の入院を必要とする人工関節周囲感染症

UTI発症後2.25年以内,またはAUR発症120日後以内のもの)とした.

 

結果

合計113,061例(THA 44,495,TKA 68,566)が対象となった.

年齢の中央値は74歳であった(四分位範囲[IQR],70〜79歳).

これらの患者のうち,28,256人(25.0%)が少なくともUTIを一度有し,年齢が高く,女性であること,また抗生物質投与歴があり,膀胱鏡検査や尿閉,心房細動を有する傾向があった.

これらのUTIの大部分は非特異的UTIであり,患者は外来治療を受けていた.

全部で2,516人の患者(2.2%)が処置の30日以内にAURを有していた.

これらの患者は,高齢男性,合併症を有しており,経尿道的処置または膀胱鏡検査および泌尿器科治療歴があり.全身麻酔を受けている傾向があった.

合計1,262人の患者(1.1%)が入院を必要とする関節感染症を有していた.

多変量回帰分析では、UTIは関節感染のリスク増加と関連していた(ハザード比[HR],1.21 [95%信頼区間(CI),1.14〜1.28]; p <0.01).

しかし,多変量解析では,AURと人工関節周囲感染との関連は示されなかった(HR,0.99 [95%CI,0.60〜1.64]; p = 0.98).

 

結論

UTIは人工関節周囲感染のリスク増加と関連していたが、AURは重大な危険因子ではなかった.

この患者集団における症候性UTIの適切な治療は,人工関節周囲感染を予防するために重要でありうる.

 

コメント

大規模な検討であり,感染率も1.1%と妥当な数字となっていると思います.

人工関節を受ける方は高齢者が多いので,尿路感染症もバイアスという可能性も否定できませんが,尿路感染などの感染症から菌血症となり発症するというストーリーが想定されます.

人工関節置換後の発熱,尿路感染症は治療の閾値を下げてもらうよう内科医に啓蒙してもよいのかもしれません.