1.胸郭出口症候群とは
第一肋骨,鎖骨,斜角筋などで構成される胸郭出口部で腕神経叢,鎖骨下動静脈の圧迫や伸長によって上肢の痛みやしびれ症状を呈する疾患です.
頚椎疾患や肩関節疾患との鑑別が必要になってきます.
2.症状
胸郭出口症候群150例のまとめでは
頭痛(20%),頚部痛(34%),肩の痛み(90%),上肢の痛み(38%),異常感覚(84%),腫脹(6%)に見られました.
(J.Ide et al. "Compression and stretching of the brachial plexus in thoracic outlet syndrome: correlation between neuroradiographic findings and symptoms and signs produced by provocation
3.病態の分類
①腕神経叢圧迫型と②腕神経叢牽引型,③①,②の混合型の3typeが提唱されています.
血管性は少なく,約95%が腕神経叢刺激過敏状態を呈する神経性といわれています.
①腕神経叢圧迫型は男性に多く,筋肉質で怒り肩で,肩甲帯の不安定性はない方に多くみられます.
(画像はイメージです)
②腕神経叢牽引型は圧倒的に女性に多く,なで肩,円背姿勢を呈し,肩甲骨の易下垂性がみられ,若年者に多くみられます.
4.診断
まず症状として上肢挙上動作で症状が増悪することで本疾患を疑います.
次に斜角筋間や鎖骨上窩を指で刺激してTinel様徴候という圧痛と放散痛が出現するかを確認します.
放散痛の出現が,手指までか上腕までか,局所の圧痛かで重症度を把握します.
理学初見について
90°外転外旋位症状誘発テスト
Roos test(3分間挙上負荷試験)
脈管圧迫テスト(Adson test, Wright test, Eden test)などを行います.
前述のIdeらの論文では
①腕神経叢圧迫型では90°外転外旋位症状誘発テストが感度100%,特異度75%
②腕神経叢牽引型では他の上肢下方牽引症状誘発テストが感度100%,特異度93%であると報告されています.
まとめ
上肢を挙上したときに上肢しびれ症状がある場合.
男性では腕神経叢圧迫型を考慮して90°外転外旋位症状誘発テスト.
女性では腕神経叢牽引型を考慮して上肢下方牽引症状誘発テスト.
が有効である可能性があります.
臨床で遭遇することは頚椎や肩関節疾患と比較して少ないのですが,診断方法について理解しておく必要がありますね.