年末調整の申請の際に所得控除できる内容について検討してみました.
確定拠出年金(Defined contribution pension:以下DC)について現時点での内容をまとめてシミュレーションしてみたいと思います.
DCの制度と,現在の年金制度
日本の年金制度は,3つの年金から構成されているため,「三階建て」と呼ばれています.
まず,20歳以上の全国民が加入する国民年金があります.
これは、加入期間の長さによってもらえる金額が決まる仕組みです.
次に,民間のサラリーマン・公務員等が加入する厚生年金保険,自営業者・フリーランスが加入する国民年金基金があります.
厚生年金保険は強制加入のため,選択の自由はありません.
なお,公務員等は従来共済年金に加入していましたが,2015年に厚生年金保険に一元化されました.
一方,国民年金基金は任意加入です.
加入すると追加の掛金の負担が生じますが,将来受け取れる年金額は増加するというメリットがあります.
最後に,従業員を対象として企業が独自に運営する企業年金制度があります.
企業によっては、高額の年金が受け取れる場合もあるのが現状です.
また,公務員は年金払い退職給付が受けられる仕組みになっています.
これらの年金制度に加え,個人として積み立てを行う「確定拠出年金」があります.
個人型DCと企業型DCについて
確定拠出年金には,個人型確定拠出年金(以下iDeCo(イデコ))と,企業型確定拠出年金(以下企業型DC)の二種類があります.
iDeCo(イデコ)
自分で掛金の金額を決め,自分でお金を出します(=拠出する).
掛金が全額所得控除の対象となるので,確定申告・年末調整により税金の還付が受けられます.
かつては自営業者(国民年金第1号加入者)か,勤務先の企業に企業年金制度がない会社員(国民年金第2号加入者)しか利用できませんでした.
2017年1月から,公務員や企業年金に加入している会社員,専業主婦(国民年金第3号加入者)もiDeCo(イデコ)に加入できるようになりました.
企業型DC
企業が決まったルールに基づきお金を出します(=拠出する).
企業が掛金を負担するので、企業側が会社の損金として処理します.
※従業員が一部掛金を負担するケースもあります(マッチング拠出).
一方,大事な共通点もあります.
拠出した掛金の運用は,どちらの場合でも自分が行うことです.
掛金を拠出するのは誰か,そして税制上はどう扱われるのかについて,違いを押さえておきましょう.
DCのメリットについて
①税制優遇措置が充実しています.
②運用コストの安い投資信託商品が利用できます.
③企業型DCの場合,社外に拠出金を積み立てているので,倒産しても従業員の年金資産として保護されます.
①税制優遇措置が充実しています.
1)掛金が全額所得控除の対象(個人拠出分)
個人型確定拠出年金(iDeCo)の場合,自営業者は月68,000円,年間816,000円まで掛金を拠出でき,全額所得控除の対象となります.
また,サラリーマンは月23,000円,年間276,000円まで掛金を拠出でき,全額所得控除の対象となります.
また所得税は原則,年末調整で還付が受けられます.
確定拠出年金法の改正により,2017年1月から公務員も個人型確定拠出年金に加入できるようになりました.
公務員の掛け金上限額は毎月12,000円で,年額144,000円になります.
仮に所得税が10%(課税所得金額195万~330万円以下)だと仮定すると,住民税(10%)と合わせて,28,8000円還付されます.
企業型DCの場合も、本人が上乗せ拠出した金額は同様のメリットがあります.
2)運用益は非課税
一般の金融商品の場合,得られた利息に対し,源泉分離課税(20.315%)が行われます.確定拠出年金の場合は運用益が非課税となるので,利益をそのまま受け取れるます.
3)受け取るときにも税務上のメリットがある
確定拠出年金の場合,運用した成果を年金または一時金の形で受け取ります.ここでも控除が受けられます.
年金で受け取る場合は他の公的年金と合算し,公的年金等控除が受けられます.
一時金で受け取る場合は退職金などと合算し,退職所得控除が受けられます.
②運用コストの安い投資信託商品が利用できます.
確定拠出年金用の商品は一般に購入時費用がかかりません.
また投資信託の手数料である信託報酬については,かなり低く設定されている商品もあり,商品選択の際に信託報酬も参考にするとよいです.
デメリット
デメリットもあります.
拠出金が60歳になるまで受け取れないこと.
そのため,途中で引き出すことを前提として短期的な資産形成をする場合には向いていないでしょう.
しかし,途中で引き出せないということは天引き貯金と同様に長期的な資産形成に向いているとも言えます.
iDeCo制度からみた法人設立の意義
さて人生ゲームに勝つために,年金のルール,特にDCについて勉強しました.
個人でできる節税対策について考えていきます
①確定申告を自分で行う.
まず現時点で会社に確定申告をしてもらっている方は必ず自分で行うようにしてください.
会社勤務の場合,自営業と違ってレシート,領収書を提出する必要はないので,保険会社から送られてくる控除証明書をみて数字の記入,書類を提出すれば問題ありません.
②できるだけ控除を受ける
ふるさと納税,iDeCoを活用して可能な限り控除金額が大きくなるように仕組みを作ってください.
ふるさと納税は上限金額をシミュレーションした後は,上限を超えないように寄付をして証明書を控えておきます.
iDeCoは口座開設,商品,積立設定など最初が大変に感じますが,一度仕組みをつくれば後は商品を変えるとき以外特に変更する必要はありません.
③法人設立(いわゆるマイクロ法人)
iDeCoをみるとわかるように自営業者は月68,000円,年間816,000円まで掛金を拠出することができます.
年間積立額が816,000円にもなってくると節税のインパクトが全く違いますし,積立金額+投資信託での複利によるリターンの増加から,1粒で3度美味しいことになります.