学会発表のススメ
臨床研究を本格的に始める前に前段階の学術経験が必要です.
研究や論文より気軽にできる学術経験,それが"学会発表”です
学会発表の意義
著明な先生によっては"地方会"という各学会が行っている,地方での発表は不要という意見もあるでしょう.
しかし,後輩を指導していて,
1.論点がまとまっていない.
学会発表にはある程度の臨床経験が必要です.
この症例,研究のどこが新規,有用な点なのか
聴衆が聞きたいことは何なのか.
結論は発表に基づく妥当な内容か
短い時間で自分の意見を伝えるには意見をまとめる必要があります.
2.発表技術が足りない.
声が小さい
原稿の棒読み
質疑応答に十分に答えられない
これらは経験を積むことで改善が得られるファクターです.
3.スライド作成の技術が未熟
スライド作成を効率化するにはテンプレート作成,自分の型作りが有効です.
パワーポイントではスライドマスターという機能で型を作ったり
過去のスライドを流用して内容だけ変更するということが可能になります.
そのためには発表回数を多くして自分の中の引き出しを多くするしかありません.
一方医学の歴史は長く,
・発表に値するような新規例
・新規の研究,検討の発表
・世紀の大発見
などは現実的に難しいでしょう.
我々にできることは,日々の臨床の気づきや,有効なノウハウを仮設演繹法で一般化して広めることにあると思います.
そのために学会発表,論文化を行うことが必要です.
学会に参加するだけでなく発表することで
1.当事者意識をもって学会に参加することができる
自分が発表する学会では緊張感,集中力が違います.
「祭りに参加するのに神輿が必要だろ?」
私の先輩が学会に参加するのに必ず演題を出していました.
座右の銘となっています.
傍観者になるのではなく,当事者になりましょう.
2.同じ分野の発表に興味がわく
発表のために十分に準備,勉強したからこそ,他人の発表を理解して疑問をもつことができます.
3.出張費用が施設からでる(場合がある)
ケースバイケースですが,発表があれば出張費として施設から補助がでる場合が大半だと思います.
つまり臨床医,研究をしていくにあたり,積極的に学会に演題を出して発表するようにしましょう.
発表ネタの見つけ方
ここからは私の発表のネタの見つけ方です.
1.その分野のknown, unkuownをみつける
論文のintroductionも同じですが,発表しようと思う分野を探したら,わかっていること.わかっていないことを調べましょう
既知の内容を同じ内容で検討,研究しても,査読者の目に留まることは少ないと考えられます.
2.わかっていない分野で自力でできる研究がないか.
ではunknownの領域がわかったとして,その領域の一部分でも自分の持っている症例や施設の検討で結果をだせるのであれば,十分に発表することができます.
3.他の分野の内容を流用できないか.
また他の分野で検討されている内容,疾患を自分の領域にもってきて,論ずることで新たな知見を広めることができます.
整形外科でいえば
逆流性食道炎と脊柱変形との関連性
慢性腎臓病と高カルシウム血症のリスク
糖尿病と周術期のリスクなど
他科領域の内容を盛り込むことで,新たな発見があるかもしれません.
4.測定項目,方法を工夫できないか.
またすでに研究されている内容でも,別の方法で測定することが有用な場合があります.
例えば,術後評価の指標で現在は患者立脚型評価法を使ったり,
骨粗鬆症の診断でCTのHU値を用いてDXAとの関連性を検討したりと
検査機器,手法は日に日に進化しているので,その内容をどんどん盛り込みましょう.
5.統計処理を正確に行い,違う結果を導き出せないか.
最後は症例を集積して,統計方法を工夫することです.
ロジスティック回帰分析や多変量解析,プロペンシティマッチングなど,まだまだ検討されていない項目が多数あるはずです.
以上私見ですが,学会発表のネタの見つけ方でした.
実際には臨床に疑問をもつために勉強が必要です.
興味をもった疾患などに対して,これら手法を組み合わせてネタを作ります.
そのためには広いアンテナと行動力が必要となります.
マルチタスクで突き進みましょう!