頻度の多い外傷である,指の怪我.
指尖損傷,爪損傷について解説しています.
問診
受傷機転・時間,年齢,既往,内服薬などに加えて職業,利き手を聴取します.
受傷後のその人の日常生活をイメージします.
必要な検査,所見
理学所見:損傷部位,合併する神経,腱,血管障害の有無を調べます.
画像診断:損傷の程度や受傷機転で骨折を疑う際には単純X線写真を撮影して,骨折の有無を調べます.
診察のPoint
1.汚染の状況
土壌,汚染水などに接触している際や,実際に異物がある場合や,
犬,猫,ヒトの咬創などの際には汚染があります.
十分に洗浄して,抗菌薬の投与は破傷風トキソイドを検討します.
破傷風トキソイドの適応はリンク記事を参照してください.
2.損傷レベル,程度
指尖損傷ではZone分類を用いて,場所の把握を行います.
損傷部位で治療方針が異なってくるためです
3.末節骨骨折の有無
骨折の有無によって,シーネ固定やbuddy tapingなどの固定が必要になるかどうかの方針が変わります.
切創では不要と思いますが,指をぶつけた,挟んだなどの受傷機転では骨折を否定するために単純X線写真を検討してください.
4.爪の損傷の程度
爪の損傷,破壊の程度を確認します.よっぽど損傷がひどい際以外は,爪床に戻すことができないか考えましょう.
「整形外科医のブログ」の先生も爪温存の重要性を紹介しています.
整形外科コンサルテーションが必要となる例
以下の際には整形外科コンサルテーション検討します.
1.→高度の汚染.高圧注入損傷など
感染の危険性,軟部組織損傷による壊死の可能性があります.
2.→指尖切断,高度の挫滅
指の再接着術や断端形成の必要性が生じます.
3.→末節骨骨折+爪脱臼,損傷など開放骨折を疑うとき
開放骨折の場合には初期に整形外科に依頼しておいた方が無難です.
このあたりは施設によって異なるので,確認しておきましょう.
コンサルトは端的に患者背景と疑う病名,対処してほしい旨を説明しましょう.
対処法
一般的な事項は他に譲ります.
爪脱臼+末節骨骨折(-)のとき
爪脱臼を整復して縫合してdressingを行います.
爪脱臼+末節骨骨折(+)のとき
開放骨折なら十分な洗浄をして爪整復を行い,必要であればK-wireを用いて骨接合を行います.
爪床・爪母の鋭利な損傷のとき
抜爪せず,爪甲のみ縫合またはテープ固定
爪床の損傷を疑う場合には爪甲を剥離して7−0吸収糸で縫合を行い,剥離した爪甲は汚染がなければ元の位置に戻し,シラー法(Schiller法)で縫合して爪をシーネとして使用します.
Reference
澤泉卓哉,今日の整形外科治療指針第7版. pp503-504